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高齢の親が行方不明になったときの探し方と注意点

高齢の親が行方不明になったときの探し方と注意点

高齢の親が突然いなくなってしまった――そんなとき、多くの家族は深い不安と焦りに襲われます。実際、認知症による行方不明は年々増加しており、誰にでも起こりうる身近な問題となっています。大切なのは、迷ったり慌てたりする前に適切な初動対応を取ることです。1時間、1分の判断が、その後の結果を大きく左右することもあります。

本記事では、高齢症の高齢者が行方不明になった際に家族がまず取るべき行動や、警察に届け出る際のポイント、地域の協力体制、そして探偵に依頼するという選択肢についても、わかりやすく解説します。大切な家族を無事に見つけ出すための備えとして、ぜひお役立てください。

なぜ高齢者は行方不明になりやすいのか

高齢者が突然行方不明になるという出来事は、誰の家庭にも起こりうる身近な問題です。その背景には、加齢にともなう記憶力や判断力の低下、時間や場所の感覚の混乱といった特性が関係しています。とくに徘徊と呼ばれる行動が見られる場合には、本人は目的を持って外出しているつもりでも、実際には目的地にたどり着けず、途中で迷子になってしまうことが少なくありません。

一見しただけでは「元気に歩いている高齢者」に見えるため、周囲も異常に気づきにくく、保護が遅れることもあります。加えて、家族の側でも「まさか自分の親が行方不明になるとは」と油断してしまい、初動が遅れてしまう傾向があります。

こうした事態を防ぐには、高齢者がどのような行動パターンで外出してしまうのかをあらかじめ知っておくことが大切です。まずは、徘徊の具体的な特徴を見ていきましょう。

徘徊の特徴と行動パターン

高齢者の徘徊には、明確な目的があるようでいて、実際には見当違いな行動をとるという特徴があります。たとえば、昔住んでいた家に帰ろうとする、かつて通っていた職場へ向かう、亡くなった家族を探しに出かけるといったケースが典型的です。本人のなかでは「正しい行動をしている」という感覚があるため、外出を制止しようとしても納得してもらえないことがあります。

昼夜の区別がつきにくくなっており、深夜に外出することも珍しくありません。時間や場所の感覚が曖昧なまま歩き続けるため、遠く離れた場所で発見されるケースも多く、交通事故や熱中症、転倒といった危険も伴います。外出中に誰かに声をかけられても、自分の名前や住所を正確に伝えられないことがあり、保護されたとしても身元が確認できず、家族への連絡が遅れてしまうケースもあります。

こうした徘徊行動は一時的に落ち着くこともありますが、再発の可能性は高く、一度でも行方不明になったことがある場合は、今後の備えとして日常的な対策が欠かせません。

家族の気づきにくさと見過ごされやすい兆候

高齢者が徘徊によって行方不明になるケースでは、家族が「まさか」という気持ちを抱いていたという声をよく耳にします。これは、徘徊が急に始まるのではなく、日常の中に小さな変化として現れるため、見過ごされやすいからです。

たとえば、玄関の鍵を頻繁に開け閉めするようになった、玄関先でぼんやり外を見ている時間が長くなった、同じ話を何度も繰り返す、夜中に起きて家の中を歩き回る――これらは一見すると深刻な兆候には見えないかもしれませんが、徘徊の前ぶれである可能性がある行動です。

「近くのスーパーに行ってくる」と言って出かけたまま戻らなかったという例では、これまで何度も無事に帰ってきていたために、家族も特に注意を払っていなかったというケースが少なくありません。行き先や帰宅時間を確認せず、無意識に“今日も大丈夫だろう”と判断してしまうのです。

高齢者自身が体調や記憶の変化を自覚していない場合も多く、家族に対して「心配しすぎ」「そんなことはない」と否定的な反応を見せることもあります。こうしたやり取りの積み重ねによって、家族が必要以上に心配するのを控えるようになり、異変を見過ごしてしまうことがあります。

だからこそ、日常生活の中で感じた「いつもと少し違うかもしれない」という直感や違和感を、軽く扱わないことが重要です。たとえ大事に至らなかったとしても、備えすぎて損することはないという意識で、早めの対策や周囲との情報共有を心がけることが、行方不明を防ぐ第一歩となります。

まず行うべき初動対応

高齢者が突然いなくなったことに気づいたら、初動対応が非常に重要です。迷子になっている可能性がある場合、距離的にもそれほど遠くには行っていないことが多く、早期に発見できる可能性が高いためです。逆に対応が遅れると、遠方に移動してしまったり、事故や体調不良につながる危険も増します。

1時間以内に取るべき行動

まず行うべきは、自宅の中や敷地内をもう一度しっかり確認することです。押し入れや物置、裏庭や倉庫など、普段は立ち入らないような場所にも念のため目を通してください。焦って外に出て探し始める前に、家の中を見落としていないかを冷静にチェックすることが大切です。

そのうえで、近隣を歩いて探します。よく通る道や、以前住んでいた場所の方向、かかりつけの病院、公園、スーパー、コンビニ、神社、バス停など、本人にとってなじみのある場所を優先的に確認しましょう。とくに昔の記憶が残っている場所を目指す傾向があるため、「今の生活拠点」ではなく「かつて暮らしていた場所」の近くも要注意です。

次に、近所の住人や商店に声をかけて、最近見かけたかどうかを尋ねます。その際、できれば当日の服装や持ち物の特徴、歩き方の癖などを伝えると、より具体的に思い出してもらいやすくなります。高齢者は目立つ存在ではないため、詳細な情報がなければ記憶にも残りにくいものです。

一方で、複数人で探す際は、誰がどこを担当するかを明確に決めておかないと、同じ場所を何度も巡ってしまい効率が下がる可能性があります。手分けして行動する場合は、連絡を密に取り合うことも忘れないようにしましょう。

スマートフォンやGPS端末を持たせていた場合は、アプリや位置情報履歴から行動の手がかりを得られることがあります。GoogleアカウントやLINEの位置共有機能を有効にしていたかどうかも、すぐに確認してみてください。

この段階で見つからなかったとしても、情報を整理しておくことはその後の警察への届け出や探偵への相談時にも役立ちます。1時間のうちにどれだけ効率よく動けるかが、その後の展開を大きく左右します。

警察への行方不明者届の出し方と注意点

1時間以内に捜索しても発見できなかった場合は、速やかに警察に「行方不明者届(旧:捜索願)」を提出することが大切です。高齢者の行方不明は命に関わるリスクもあるため、早い段階で公的な対応を仰ぐ必要があります。

届け出は、基本的に最寄りの警察署で行います。身分証明書とともに、行方不明になった本人の情報をできるだけ詳しく伝えることが求められます。氏名や年齢、性別はもちろんのこと、当日の服装、靴の種類、持ち物、身長・体型、髪型や眼鏡の有無、歩き方の特徴なども、できる限り正確に伝えましょう。最近撮った写真がある場合は、持参すると情報提供を受けた人への照合がスムーズになります。

警察では、行方不明者を以下の2種類に分類して対応しています。
1つは「特異行方不明者」と呼ばれるもので、事件や事故、自殺の可能性がある、あるいは認知症や病気などで保護が必要と判断されるケースです。この場合、警察は捜索活動を積極的に行い、パトロールや情報提供の呼びかけも実施されます。
もう1つは「一般行方不明者」とされるもので、本人の意思で外出したと考えられる場合です。この場合は捜索が行われることは少なく、行動範囲の照会や情報共有にとどまることもあります。

高齢者が行方不明になった場合、認知症の有無にかかわらず、本人の判断能力や健康状態を説明することで「特異行方不明者」として受理されやすくなります。迷わず警察に相談し、本人が保護の必要な状態であることをしっかり伝えましょう。

注意点として、警察に届け出を出しても、「発見できたかどうか」や「どこにいたか」などの詳細情報がすぐに共有されない場合もあります。本人の意志が尊重されるため、保護されていても「連絡は望まない」と言えば、家族に通知されないケースもあるのです。

そのため、届け出だけに頼らず、自分たちでも情報収集や捜索を並行して行う必要があります。また、警察に伝えた情報は探偵に依頼する際にも大いに役立ちます。できるだけ記録として残しておくと、次の手にスムーズにつなげることができます。

地域の協力体制や見守りネットワークの活用

高齢者が行方不明になったとき、警察と家族だけで捜索を行うのには限界があります。そこで重要になるのが、地域の支援体制や見守りネットワークを活用することです。近年、自治体や福祉機関を中心に、徘徊高齢者を早期に保護するための取り組みが全国的に整備されつつあります。

まず活用したいのが、自治体が実施している「高齢者見守りSOSネットワーク」や「認知症高齢者見守りシステム」などの制度です。これらは、家族から行方不明の届け出があった場合に、地域の協力機関(民生委員、自治会、スーパー、タクシー会社、郵便局など)と情報を共有し、目撃情報を募る仕組みです。特に地域での顔なじみが多い高齢者ほど、早期発見につながる可能性が高まります。

地域包括支援センターは、高齢者やその家族を支援する中核的な窓口です。普段から見守りや相談支援を担っている担当者がいる場合は、その人から地域ネットワークへの連絡が迅速に行われるため、捜索活動の幅が広がります。あらかじめ支援センターと関係性を築いておくことで、万が一の際にもスムーズに連携が取れるでしょう。

近年では、一部の自治体でGPS端末の無料貸与や見守りアプリの導入も進んでおり、万一の徘徊時に居場所が把握しやすくなる取り組みも広がっています。住んでいる地域でどのような制度が利用できるのか、平時から確認しておくことが大切です。

近隣の住人や商店などに「実は徘徊の可能性がある家族がいて、見かけたら連絡がほしい」と一声かけておくことも、非常に有効です。プライバシーの観点で話すことに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、“何かあったときに頼れる人が多い”ことは、安心につながる社会的備えとも言えます。

地域の力を借りるという発想は、決して他人任せではなく、家族の行動を補完する賢明な手段です。捜索の手段として、そして再発防止の環境づくりとして、積極的に地域の仕組みを活用していきましょう。

それでも見つからないときに検討すべき手段

警察への届け出や地域ネットワークを活用しても、残念ながらすぐに発見につながらないケースもあります。時間の経過とともに移動範囲が広がり、手がかりも少なくなるなかで、家族の不安や焦りは日ごとに募っていくことでしょう。

そんなときに選択肢として浮かんでくるのが、探偵などの民間調査機関への依頼です。「探偵に依頼するのは大げさでは?」と思うかもしれませんが、実は多くの家族が冷静な判断のもとで活用しており、発見につながったケースも少なくありません。

ここでは、探偵への依頼がどのような場面で有効なのか、また警察とはどのような違いがあるのかについて、わかりやすく解説します。

探偵への依頼は有効か?

高齢者の行方不明が長引くと、情報が途絶え、家族だけでは打つ手がなくなってしまうことがあります。そうした状況で、探偵への依頼は現実的な選択肢として有効に機能します。

まず、警察と探偵の大きな違いは「調査の対象範囲と対応の柔軟さ」です。警察はあくまで公共機関であり、事件性や緊急性がないと積極的に動けないことがあります。一方で、探偵は依頼者からの希望に基づき、個別の事情に合わせて柔軟に調査を進めることが可能です。

たとえば、警察が「自発的な外出」と判断して動かなかったケースでも、探偵であれば徘徊の可能性を前提に、最後の目撃情報から足取りをたどったり、本人が訪れそうな施設や地域を徹底的に調べたりと、きめ細かい対応が行われます。聞き込みや張り込み、過去の生活履歴に基づくルート分析など、専門的なノウハウが活かされるのも大きな強みです。

探偵による調査は家族に代わって24時間対応できる点でも安心感があります。昼夜を問わず行動する高齢者の捜索では、迅速な対応が発見の鍵となることが多いため、行動力のある探偵の存在は心強い味方になります。

もちろん、調査には費用がかかりますが、「一刻も早く見つけたい」「もう手がかりがない」と感じたときに、家族ができる最後の有効な手段として活用されているのが現実です。

本人の安全が最優先である以上、手段にこだわるよりも、結果につながる選択肢を持っておくことが重要です。探偵への依頼は、決して特別なことではなく、冷静な判断のもとで検討すべき一つの方法なのです。

依頼時の注意点

探偵に人探しを依頼するとなると、気になるのが「どれくらい費用がかかるのか」「どのくらいの期間で見つかるのか」という点です。また、安心して任せるためには、依頼時に気をつけるべきポイントも押さえておく必要があります。

まず費用についてですが、人探し調査の相場はおおよそ10万〜50万円程度が目安とされています。これは調査の難易度や期間、調査員の人数、使用する手段によって変動します。たとえば、行方不明になってから日が浅く、最後の目撃情報が明確にある場合は、比較的短期間で調査が完了する可能性があり、費用も抑えられる傾向にあります。

一方、数日以上経過している、本人にスマホやGPS端末を持たせていない、手がかりが乏しいといった場合は、調査日数が延びるため、その分費用も増える可能性があると考えておくべきです。契約前には、どこまでの範囲を調査し、どのような形で報告されるのかを明確に確認しておくことが重要です。

調査期間については、早ければ数日以内に発見に至るケースもあれば、状況によっては数週間から1か月以上かかることもあります。高齢者の行方不明は、交通機関を使って遠方へ移動してしまっている可能性もあり、最初の行動範囲を絞り込むのが難しい点も調査の長期化に影響します。

依頼時の注意点として、まず確認したいのが「探偵業法に基づいた届け出をしているかどうか」です。きちんと行政に登録されている探偵業者であれば、違法な手段を使うことはなく、調査報告書の信頼性も高くなります。また、「成功報酬」や「調査時間無制限」といった都合の良すぎる条件を提示してくる業者には注意が必要です。曖昧な契約内容や、後から高額な追加請求をされるトラブルも報告されています。

信頼できる探偵事務所であれば、見積もりの段階で調査の可否・調査方法・費用・期間の目安を丁寧に説明してくれます。不明点や不安をそのままにせず、納得できるまで相談してから契約することが、安心して依頼を進めるうえでの大切なステップです。

発見後に取るべき対応と再発防止策

無事に高齢の家族が見つかったとき、多くの方がまずは安堵されるでしょう。しかし、そこで終わりではありません。再び同じような行方不明を繰り返さないために、次に備えた対策を講じておくことが何よりも大切です。

ここでは、家庭でできる再発防止策を中心に、地域資源の活用法や本人への接し方のポイントなども含めて、今後の備えとして実践できる方法を紹介していきます。

再発防止のために家庭でできる工夫

高齢者の行方不明が一度でも起きた場合、「また起きるかもしれない」という視点で日常を見直すことが重要です。特に徘徊傾向がある場合は、本人の意思に反して外出してしまうことが多いため、物理的・心理的な対策の両面から備えを行う必要があります。

まず効果的なのが、GPS端末や見守りサービスの導入です。最近では、靴やバッグに取り付けられる小型GPSや、スマートフォンと連動するタグ型の見守りデバイスも数多く登場しています。リアルタイムで現在地が確認できるものもあり、万が一のときでも素早く所在を把握できます。費用面が気になる場合でも、自治体によっては一部補助制度があるため、地域の窓口で確認してみましょう。

自宅からの無断外出を防ぐ工夫も有効です。たとえば、玄関や勝手口に開閉センサーやチャイム機能を設置することで、外出の気配をすぐに察知できる環境を整えることができます。夜間の外出を防ぐためには、照明を工夫したり、見守りカメラを設置することも検討するとよいでしょう。

環境だけでなく、本人の心理にも配慮が必要です。「外に出てはいけない」と強く制限するよりも、「安心できる居場所がある」と感じてもらえるような声かけや日常の関わりが、徘徊の衝動を和らげる助けになります。家族の対応が一方的な禁止になってしまうと、かえって不安や反発を招く恐れがあるため注意が必要です。

近隣の人にも状況を共有しておくと、万が一のときに早期の対応がしやすくなります。あらかじめ顔見知りになっておくだけでも、保護や情報提供の確率は高まります。

日常生活の延長線上で無理なくできる対策を積み重ねていくことで、本人にも家族にも負担の少ない見守り環境を築くことが可能です。次に、地域資源や制度をどう活用していくかを見ていきましょう。

地域サービスや制度を上手に活用する

高齢者の行方不明を未然に防ぎ、もしもの際にも迅速な対応が取れるようにするには、家庭内の対策だけでなく、地域で提供されている支援制度やサービスを上手に活用することが欠かせません。特に、高齢者支援に力を入れている自治体では、見守り体制や緊急対応ネットワークの整備が進んでおり、地域全体での連携が期待できます。

代表的な制度のひとつが、「徘徊高齢者SOSネットワーク」や「認知症高齢者等見守り事業」といった自治体独自の取り組みです。これは、行方不明の高齢者が出た際に、地域の協力機関(商店、交通事業者、郵便局、民生委員など)へ情報提供を行い、目撃情報の収集や迅速な保護につなげる仕組みです。事前に本人の顔写真や特徴を登録しておくこともでき、万が一の際には非常に強力なサポートになります。

地域包括支援センターでは、高齢者の状態に応じた見守りサービスの提案や、介護保険制度の活用についてもアドバイスを受けられます。定期的な訪問や通所サービスを利用することで、本人の生活状況を第三者が把握できるようになり、異変があったときにも早期に対応できる環境が整います。

一部の自治体では、GPS機器の貸出や購入費用の補助、外出時に身につけるためのQRコードシールの配布なども行っています。こうした制度は地域によって内容が異なるため、住んでいる市区町村の窓口に相談して情報を得ることが第一歩です。

認知症サポーター制度などを通じて、地域住民自身が高齢者支援の担い手として関わる仕組みも広がっています。日ごろから近隣住民と良好な関係を築いておくことで、万が一の際にも声をかけやすくなり、自然な見守り体制が育まれます。

家族だけで抱え込まず、「支援を受けることは恥ではなく、賢明な選択」という意識を持つことが、再発防止と安心につながります。制度やサービスを積極的に活用し、地域とともに見守る体制をつくっていきましょう。

本人の尊厳を損なわない対応のポイント

高齢の家族が行方不明になったあと、無事に保護されたとしても、その後の接し方には十分な注意が必要です。再発を防ぐことばかりに意識が向いてしまうと、つい制限的な態度を取ってしまいがちですが、最も大切なのは「本人の尊厳」を守ることです。

行方不明という出来事は、家族にとって大きなショックであると同時に、本人にとっても強い不安や混乱を伴う体験です。保護された後、すぐに「なぜ出ていったのか」「どうしてこんなことをしたのか」と問い詰めるような態度を取ってしまうと、かえって心を閉ざしてしまい、信頼関係が損なわれてしまうおそれがあります。

まずは、安全に戻ってこられたことに対する安心感と、無事であったことへの喜びを伝えることが大切です。たとえ本人が状況を正確に理解できていなかったとしても、否定的な言葉ではなく、受け入れる姿勢を見せることが信頼回復の第一歩となります。

再発防止のために、見守り体制を強化することは必要ですが、その際も「監視」ではなく「安心して生活できる環境づくり」という意識を持ちましょう。たとえば、外出を完全に禁止するのではなく、安全な範囲での外出機会を保ちつつ、家族がそっとサポートするような関わり方が理想です。

本人の生活の自由や希望を可能な限り尊重し、日常の中で役割を感じられる場をつくることも重要です。家庭内でできることをお願いしたり、趣味や人との関わりを保つことで、「自分は必要とされている」という感覚を持てるようになります。

必要に応じて、介護職や医療・福祉の専門家と連携し、家族だけで支えきろうとせず、第三者の意見や視点を取り入れることも、本人と家族の両方にとって良い結果につながります。

大切なのは、再発防止と本人の尊厳を両立させる視点を持つことです。安全と信頼、その両方を守れる関係を築いていくことが、これからの生活にとって最も大切な支えになります。

家族が抱え込まないために

高齢の家族が行方不明になるという出来事は、周囲からは想像もできないほどのストレスや不安をもたらします。発見までの間に感じる焦り、後悔、自責の念。そして無事に見つかった後も、「また起きたらどうしよう」「自分の監督が足りなかったのではないか」という思いが残り、家族が精神的にも肉体的にも疲弊してしまうケースは少なくありません。

しかし、家族だけですべてを背負い込む必要はありません。むしろ、抱え込みすぎることで日常の生活に支障が出たり、本人への対応が厳しくなってしまったりすることの方が問題です。「頼れるものには頼る」「つながれる人とはつながる」という姿勢が、家族を守るためにも大切です。

地域包括支援センターやケアマネジャー、介護相談員など、公的なサポートを提供する窓口は思っている以上に多く存在します。見守りや介護、相談支援など、家族の負担を軽減する仕組みが整いつつありますので、「自分たちだけでは限界だ」と感じたときは、遠慮せずに助けを求めることが必要です。

また、同じような経験をした家族との交流も、気持ちを支える大きな力になります。家族会や地域の認知症カフェなど、共感し合える場があるだけでも「自分だけではない」という安心感が得られます。

そして何より、家族自身の心と体の健康を守ることを忘れないでください。高齢の家族の見守りは、短期的な対応ではなく、長く続く日常の中で向き合っていくものです。無理をせず、時には休み、誰かに頼りながら支え続けていく。それが、本人にとっても家族にとっても、最も穏やかで確実な支援につながるのです。

まとめ

高齢の家族が突然行方不明になるという出来事は、誰にとっても大きな衝撃であり、不安や焦りに包まれるものです。しかし、正しい初動対応と周囲の協力、そして地域の支援制度を活用することで、早期発見の可能性は確実に高まります。

警察や地域のネットワークと連携しながらも、必要に応じて探偵といった民間の力を借りることも選択肢の一つです。大切なのは、「もしものとき」に備える姿勢と、本人の尊厳や家族自身の心身も守る視点を持つこと。

一度無事に帰ってきたからこそ、次を防ぐために今できる準備をしておく。そうした積み重ねが、安心できる暮らしを支える土台になります。

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